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Last Update : 2003.1.22

学校検尿について

Question 56

 学校の集団検尿を扱っています。

 『児童,生徒,学生,幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について(通達)』の文中に「蛋白尿は,6時間から12時間後に陰転することがあるので,検尿は採尿後およそ5時間以内に行うことが望ましいこと。」とあります。

 病院などでは尿検体を長時間放置することは考えにくいので、問題にならないでしょうが、学校検尿では僻地の遠方からの集配では早朝尿で採取された検体を検査するまでの時間が厳しい場合があります。

 上記文面に関する経時変化などを検討した文献等を探しているのですが、なかなか見当たりません。化学的な根拠を知りたいのですが、何か参考になるものがありましたら、ご教授ねがえないでしょうか。よろしくお願いします。

Answer

 Medical Technology誌(医歯薬出版)の1997年8月号(Vol.24 No.9)936〜939ページ“臨床検査 Q&A”に、野崎 司氏 他の書かれた解答が掲載されています。

 それによりますと、室温保存、冷暗所(4℃)保存で24時間追っています。結果は、保存方法を問わず、ほぼ一定の値となっています。プロットで変化を示す図も載せられています。

 学校集団検尿では、5時間以内(早朝尿7:00→12:00)に検査を行える場合は少なく、多くは6〜8時間を経過しています。精度的にはやや問題はあるものの現状の学校検尿では対応しきれない部分です。「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項」体育局長 通達は初めて見ました。教育委員会に取り扱い等は訪ねてみようと考えます。

 学校検尿の一般的な理解として

  1. 蛋白に関しては、長時間安定。ただ、PHがアルカリに傾いた時は偽陽性が考えられ、試験紙法陽性には必ずスルホサリチル酸法を実施し確認する。特に陽性率に大きく影響する為、必ず実施しなければなりません。

  2. 時間経過で最も懸念されるのが潜血ですが、1次検尿では試験紙で確認するため、ヘモグロビンのPOD様活性の低下が気になるところです。検査までの時間短縮の努力や保冷を心がける。特に2次検尿では尿沈渣が加わる為、慎重な対応をとらなければなりません。その為には、クーラーボックスによる保管・搬送を徹底する。保冷車を使用するところもあります(1次から使用するところも)。検査室では、最優先で検査を実施します。それでも赤血球数と試験紙の結果が乖離するることも多いです。ゴースト状の赤血球をカウンできるよう熟練が必要です。また、場合により、保存液を使用することもあります。障害のある子供達の中には尿がスムースに採取できない子供達もいますので、提出された(前日の尿や腐敗尿)でも最善の努力をし、何とか検査・確認するようにします。

  3. 糖も厳密に言えば、細菌増殖による糖の低下が考えられますが、学校検尿の時間内ではその低下は許せる範囲と考えます。

 学校検尿の条件は厳しいですが、

  1. 精度を維持するため、また学校側に良い印象を与えるためにも、できるだけ早く集めに行く。 学校内での集め方も、できるだけ冷暗所に保管していただくようお願いする。 採尿前日にビタミンC(ジュース類、スポーツ飲料、各種の市販されているお茶類)を摂取しない。 これは徹底指導しなければなりません。 また、当然ですが生理中の採取は避ける。 その為には複数回の回収日の設定等、収集サイクルをきちっと決めておく必要があります。 学校検尿の検体は時間経過してはいますが、学校側や受診者に「精度維持の為の働きかけ」は積極的にしなければなりません。

  2. 腎臓病検診(学校検尿の蛋白と潜血検査をそれの1次検診という)では連続陽性者を2次検診へ、そこから3次精検へ振り分けられますが、必ず1次検診では「1次検尿の陽性者を対象に2次検尿」を実施しなければなりません。2次検尿の陽性者には尿沈渣を実施することは2次検診への情報として重要です。ですから細胞成分を何とか維持する為には上記のとおり、クーラーボックスを使用しなければなりません。

財団法人 兵庫県予防医学協会 東塚 伸一



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