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Last Update : 2002.10.07

「心膜液」「心嚢水」「心嚢液」の表現の使い分けについて

Question 44

 心膜液・心嚢水・心嚢液という表現があるのですが、いずれもpericardial fluidの訳語で
心嚢内に貯留する液を示していると考えられるのですが、何か使い分けとかあるのでしょうか
(たとえば解剖学的な内容で使用するとか、成分的な違いとか、量の違いでちがうとか)。
 それとも定義の違いがあるのでしょうか?また、全く同じ物をさす場合、この3つの表現のうち
どれが主流なのでしょうか?教えてください。

(匿名)

Answer

 結論から申しますと、心嚢液とか心嚢水とかは実際に使いますが、心膜液とは使いません。
そして英語にはない日本独特の「使い分け」はしていません。
 2つのうちどれが主流か?といわれても困りますが、心嚢液なら誤解無く伝わります。
私は無難に日常的には、英語表記にしていますけど(;^_^)A

 心嚢とは、心臓を包むように袋状の心外膜があります。普通はこの心臓を心外膜が包んだ
状態の物体を漠然と心嚢(文字通り心臓の袋)と呼んでいるのが現実のようです。
 発生学的には、心嚢の腔は、原始中杯葉細胞の間に生じる体腔の1つです。
そしてその空間に貯まる液体は、おなか(腹腔)の腹水、胸腔の胸水と同じです。

   心外膜の内側と心臓の表面は正常では触るとつるつると滑らかであり、ここには細胞診で
いうところの中皮細胞が腔の内側:つまり心外膜の内側と心臓の表面を形成しています。
一方、心外膜の外側は胸部の結合組織に移行し、肺を入れている胸腔の胸膜の外側の結合組
織と混在し、胸骨に癒着しています。子供ですと胸骨の下には胸腺が認められます。

 病理解剖をしますと、ほとんどのヒトに普通10mLくらいの淡黄色透明な液体を心嚢腔
に認めますが、この内腔液が混濁していたりザラザラしたり(胸部の感染症とかSLEなど
の自己免疫疾患や、癌があるときなど)時には内腔が閉じてしまって線維化している場合な
どがありますし、心筋梗塞などの時のように、心臓の筋肉からなる壁や冠状動脈が破けてし
まう時などは、動脈血が充満していて心タンポナーデの状態にあるなど、心嚢腔や心嚢液は
心臓のみならず胸部臓器の状態を反映しますので、臨床的には非常に重要な情報源となりま
す。
 この内腔を pericardial space (peri=外) と呼んでいます。

   心膜という用語は心臓の表面を指すのか、心臓を包む心外膜を指すのかが不正確なので普
通は使いません。ちなみに心内膜とは、心臓の壁の内側の血液を満たしている空間に接する
細胞群(膜)のことを指します。加えて、心外膜の膜の中に貯留する液体でもないので、心
膜液という呼称は避けるべきだと思います。

 一般的なことを申しましたが、疑問点は解消されましたでしょうか。

(東京都医学研究機構。認定病理医、細胞診指導医。FACB. 小島 英明 kojima@tmin.ac.jp)



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