〜胆汁溶解試験〜
近畿中央胸部疾患センター 竹野 華
Steptococcus pneumoniaeは自己融解性が強く,24時間以上培養すると菌体の崩壊が起こる。この性質は胆汁によって促進されるので,この性状に基づいた胆汁溶解試験が他のα溶血性レンサ球菌との鑑別の一つとして用いられている。
菌を24時間かけて十分に増菌させてから検査する試験管法と,十分な菌量が必要ではあるが非選択分離培地から直接検査できる迅速推定法(2法)がある。
【試験管法】
方法
@ Todd-Hewitブイヨン(約10ml)に釣菌し,35℃で18〜24時間培養し,遠沈する
A 沈殿をpH7.0リン酸緩衝液1mlに浮遊させ,2本の試験管に等分する
B 1本に10%デオキシコール酸ナトリウム溶液(またはタウロコール酸ナトリウム溶液)0.5mlを,もう1本を対照として生理食塩液0.5mlを加える
C 35℃で10〜15分放置後,判定する
判定
透明化(胆汁溶解) → 陽性・・・Steptococcus pneumoniae
無変化(溶解しない)→ 陰性
【迅速推定法】
方法1
@ 24時間培養した血液寒天上のコロニーを釣菌し,pH7.0リン酸緩衝液1mlにMcFarland
No,5濃度に調整し,2本の試験管に等分する
A 1本に10%デオキシコール酸ナトリウム溶液(またはタウロコール酸ナトリウム溶液)0.5mlを,もう1本を対照として生理食塩液0.5mlを加える
B 35℃で30分放置後,判定する
判定
透明化(胆汁溶解) → 陽性・・・Steptococcus pneumoniae
無変化(溶解しない)→ 陰性
方法2
@ 24時間培養し血液寒天上に発育したS. pneumoniaeを疑うコロニーに,直接2%デオキシコール酸ナトリウム溶液1滴を滴下する
A 35℃で10〜15分間放置後,判定する
判定
α溶血を残してコロニーが消失 → 陽性・・・Steptococcus pneumoniae
無変化 → 陰性
【参考文献】
・ 坂崎利一,吉崎悦郎,三木寛二 著:新 細菌培地学講座 上・下 <第二版>
・ 坂崎利一編集:図解 臨床検査