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Last Update : 2005.06.06

チーム医療推進委員会だより ICT部会(インフェクションコントロールチーム)

ICT活動

関西医科大学病院中央検査部  中村竜也

 現代における感染症は様々な分野で話題となり、SARSや鳥インフルエンザをはじめ大きな社会問題にも発展します。感染症には市中で感染するものと、院内で感染するものとに分けられます。院内での感染いわゆる病院内感染は、近年マスコミ等でも取り上げられ、社会問題はもとより訴訟問題にまで発展するケースが存在し、病院経営にとっても大きな打撃を受けます。また、多くの抗菌薬に耐性を示すMRSAの登場でその対策がよりクローズアップされ、医療現場における病院内感染対策は重要課題のひとつとして認識されるようになりました。

 院内感染対策は全ての医療従事者がその意識と知識をもって施行されなければならないと考えられます。また、感染対策は医師、看護師、薬剤師、検査技師、事務部が共同で行うこと、すなわちチーム医療として位置づけなくてはなりません。そのチーム医療の一員であることを認識し、感染対策に必要とされる検査室、検査技師をめざすために今後このチーム医療推進委員会、ICTでは様々な活動を行っていきたいと考えています。

ICTとは?

 ICTとはInfection control team(インフェクションコントロールチーム)、病院感染対策チームのことです。病院内感染対策に関する組織化については、厚生労働省より「国、自治体を含めた院内感染対策全体の制度設計に関する緊急特別研究」(主任研究者:小林 寛伊・NTT東日本関東病院名誉院長)の分担研究報告書『医療施設における院内感染(病院感染)の防止について』の中で取りまとめられ、各都道府県・政令市・特別区あてに通知されています。

 その研究中の感染制御の組織化について紹介します。


  • 感染対策委員会は各部門の代表者(管理的立場にある職員、医師、看護師、薬剤師、検査技師、滅菌技士等)が参加し、定期的に開催して、感染防止に対する基本姿勢と年間計画などを作成する。
  • 直接的に感染制御を実務担当する感染制御医師(ICD)、感染制御看護師(ICN)もしくは感染制御担当者(ICP、ICS)などからなる院内感染対策チーム(ICT)が任命され、定期的に病棟巡回を実施して現場での情報収集、情報提供、効果的介入、スタッフ教育・啓発と院内感染状況の把握に努めなければならない。
  • ICTの一員として抗菌薬使用に関する薬剤師および臨床微生物検査技師の現場介入も必要である。
  • その他、病棟などの医療現場で業務を行ないながらICTとのつなぎ役として経験豊富な看護師(リンクナース)を任命して情報交換を行なうシステムもある。
  • このようにICTを機能化することにより、効果的かつ迅速な対応が可能となる。
  • 院内感染実務担当者には、院内で一定の権限と責任が与えられて組織横断的な活動が求められる。
  • さらに地域医療圏との関係を密接にし、広域的な感染防止対策にも協力していかなくてはならない。


ICTの役割

 ICTの役割は院内での感染症に関する全ての情報を把握し、病院内感染やOutbreakを監視する組織であると考えられます。臨床検査技師の役割は、サーベイランスのための情報提供やラウンドにおける検査データからの検出菌の感染症への関与などについての助言などが主です。以下にICTの一般的な業務内容について紹介します。

  1. サーベイランス(検出菌の状況や院内で発生した薬剤耐性菌に対する監視など)
  2. 抗菌薬適正使用の指導
  3. 感染対策マニュアル作成
  4. 病棟ラウンド
  5. 職員への教育(手洗い実習やワクチン接種など)
  6. 病棟の環境調査
  7. 針刺し・血液体液曝露時の対応
  8. その他の感染症の診療支援
病院感染の定義

 ICT活動は主に病院内感染を扱うことが主になります。その感染症が市中で感染したのか院内で感染したのかにより、その治療や感染対策の方針などに違いがあるために定義は重要です。以下にその定義(小林寛伊:感染制御とは.エビデンスに基づいた感染制御第1集メヂカルフレンド社、東京, 2003より抜粋)を記載します。

  1. 病院内で接種された微生物によって惹起される感染症を病院感染(院内感染)という。
  2. 退院してから発症しても病院内での微生物接種に起因する感染症であれば病院感染である。
  3. 医療従事者が病院内で接種された微生物によって感染症を惹起した場合も病院感染である。
  4. 病院外で接種された微生物によって入院後に発症した感染症は市中感染である。
  5. 特殊な病院感染として新生児の産道感染がある。
今後は…

 現在、感染対策の内容については、施設ごとで特徴があり、施設の規模や設備、人員などその理由は様々であると考えられます。感染対策のマニュアルについてもCDCから出されているものを流用してきましたが、すべてを日本の現状にあわせることは困難であることもわかってきました。

 EBMを基本とした感染対策が、効率よくそして個々の施設に合わせた形で行えることが重要であります。そのための情報を迅速に提供できることがチーム医療の一員としての臨床検査技師の役割であると考えられます。その一員として活躍できることを目標にして、今後活動を行っていこうと考えております。皆さんご協力よろしくお願いいたします。

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